第5章 トカゲ・グレイ=リングマーク
*クローバーの塔・廊下*
――ばたばたばたばた…
「いたか!?」 「あっちにはいなかった!」 「こっちにもいない!」
今日も繰り広げられる追いかけっこ
「……またなのね…」
「…あぁ、まただ…」
このクローバーの塔の主を探しに塔の中をひたすら右往左往する部下たち
そこから少し離れたところでアリスは彼と話していた
グレイ=リングマーク
通称、トカゲ
切れ長の目に長いコートを羽織り、首筋にはトカゲのタトゥーが入ったクローバーの国の役持ちの一人
「本当に、ナイトメアはどうしようもないわね…」
「…ちゃんと仕事をしてくれれば良いんだが…。あとちゃんと病院に行って、注射をして薬を飲んでちゃんと寝て…」
「はいはい、もういいわ!グレイ、あなたまたお母さんみたいになってるわよ?」
そう言って見上げると、少しだけ頬を染めてばつが悪い顔をしていた
大人の男性だけど、可愛いと思ってしまう
「すまない…。ナイトメア様はやれば出来るお方なんだが…」
「やる前から逃げるものね」
「そうなんだ…。逃げ足だけは早いお方だからな…」
「「………はぁ…」」
そして、二人で何度目かわからない溜め息を吐いた