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過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】

第13章 重すぎる愛の告白





―――それから数日、
ナナシは誰にも邪魔されること無くデータ収集に勤しんでいた。


あれからエルヴィンもリヴァイもミケという男も来ないので、
作業が捗っていた。


時折心に苦いものが込み上げたが、
希望に満ちた眼差しをエルヴィンから向けられる度に感じた
モヤモヤと比べれば軽いものだと振り払う。



そういえば、調査兵団はもうすぐ壁外調査だと
ピクシスが言っていたなと思い出した。

今では領土奪還のための遠征だが、
彼らは何故そうまでして外に出たがるのだろうかと考える。

確かに檻の中で暮らすのは不自由かもしれないが、
それなりの広さがある檻なのだから我慢すれば良いのに・・・と
ナナシは思っていた。

その考え方自体、人間と異なる価値観だと気づいていたが
愛する団長がいない今、改める気もない。




もうすぐ日が沈む時間なので、借りている立体機動装置を
トランクに詰め報告書をまとめていると、
誰かが近づいてくる足音に気づいた。


アンカやグスタフではない人物の登場に心の中で苦笑する。

もう来ないと思っていたのに・・・と顔を上げると、
そこにはエルヴィンが立っていた。


「やぁ、ナナシ」


先日の怒りに震える表情が嘘であったかのように
穏やかな笑みを向けられ、ナナシは困惑した。

あれ程酷い言い方をしたのに、
何故そんな表情を向けてくるのか理解出来なかったのだ。


「一週間後・・・私は壁外調査に向かう」


唐突に話し始めたエルヴィンにナナシは返事を返すことも出来ず、
首を傾げた。


「壁外調査へ行けば、もう二度と帰って来られないかもしれないから、
どうしてももう一度君と話がしたかったんだ」

「・・・・・・そうか」


そういう理由なら少しは納得出来る。
だが、改まって何を話したいというのだろうか?



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