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過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】

第60章 私が取りたい手








「あの・・・助けて頂きまして、ありがとうございました」


礼儀正しく頭を下げるベッカーの娘は、
あれが父親だとは思えないくらいに可愛らしい。

頬を染めて見上げてくる眼には、
エルヴィンが白馬に乗った王子様という風に見えているだろうが、
生憎エルヴィンはただ震えて助けを待っているようなお姫様は
好みではない。

どんな物語でも、自分に出来ることを考え
精一杯頑張っている名もない登場人物の方が
エルヴィンにとっては魅力的だった。


生い立ちや血筋などどうでも良い。


だから、ナナシを探しに行こうとする自分を足止めする目の前の娘が、
エルヴィンは邪魔に感じてしまった。


「あの・・・エルヴィン様。
どうか私を父の所へ連れて行って下さいませんか?」


恥ずかしそうにしながらも自分の腕に触れてくる娘の姿は
普通の男から見たら、いじらしく思えるだろう。

エルヴィンは努めて笑顔を作り、
彼女が望んでいる王子のような仕草で娘の手を取った。


「えぇ、勿論です。調査兵団の兵士が責任を持って
貴女を父君の下へお送り致しましょう」

「え・・・・いえ、そうではなく・・・」

「それでは私はまだ仕事がありますので、失礼致します」


エルヴィンは娘が最後まで言い切らない内に手を離し、
踵を返した。





―――自分が取りたい手はあの手ではない。




兵士にナナシの捜索もするように指示を出すと、
自らも立体機動装置を使って現場を飛び出した。





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