過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第2章 金髪碧眼の少年
探し物の情報を得て、ナナシはとある街にいた。
どうやらそこの領主が自分の探し求める物を持っているらしい。
隙を見て邸内に侵入し奪うつもりだが、
あれが本当にそこにあるか確証が無いので
暫く様子見になりそうだ。
人目を避けて裏路地を歩いていると、
人の声が聞こえ咄嗟に物陰に隠れた。
こっそり様子を覗うと、
路地を走り抜ける少年が目に入り怪訝に思う。
まだ年若い…10~13歳くらいだろうか?
綺麗な金髪と澄んだ青い瞳を持つ少年に、
金狼の面影を重ねそうになってナナシは慌てて首を振った。
何かから逃げているのか…
時折、後方を振り向いては入り組んだ道を選んで走り、
そのすぐ後を兵士らしき男数人が、
声を荒げながら追いかけていた。
何をして追われているのかはわからないが、
関わるのは得策ではないとやり過ごそうと考える。
だが、追いかけている奴らが第一中央憲兵だと視認した瞬間、ナナシは彼らの先回りをするべく駆け出した。
第一中央憲兵が追っているとなると、恐らく只事ではない。
普通の憲兵なら難癖をつけて小銭をせびったりする事はあるだろうが、第一中央憲兵がそんな真似をするはずがないのだ。
偉がっているという点では同じだが、
彼らは明らかに毛色が違う。
嫌な感じだ、と思いながら先回りしたポイントで子供と憲兵を待ち構えていると予想通り一行がやってきた。
昔から『憲兵』と名のつく組織が嫌いだったナナシは、
悪戯心で子供を隠してやろうとほくそ笑んだ。
憲兵の連中を殺してやる事も可能だったが、
殺しをすると何かと面倒だし、子供に変な嫌疑を掛けさせるのも憚られたのだ。