過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第32章 メデューサの微笑?
朝露が草の上で光る光景を見ながら、
ナナシはモヤモヤしていた。
朝食もエルヴィンと取ったが、
彼が昨日のことに触れることはなく、
穏やかな笑顔で世間話をするだけだった。
それが作られたモノだとすぐ気づいてしまったナナシは、
何となく気まずい気持ちになり、悶々と悩む羽目になったのだ。
あんな風にされると、
自分が彼に悪いことをしているような気になってしまう・・・。
ずっと自分は気持ちに応えられないと主張しているのだから、
気にする必要はないはずなのにどうも調子が狂う。
多分、大型犬の子犬(もう成犬だが)が、
「昨日の事は気にしてないから、自分の事撫でて!構って!」と
シュンとしながら飼い主を待っているような感じに近いだろう。
ヤバイ、エルヴィンが本当に犬にしか見えなくなってきた!末期だ!
「・・・何やってんスか?」
頭を抱えて悶えていると、背後からオルオに声を掛けられ、
そこで漸く我に返った。
「ちょっと・・・大型犬の機嫌をどう取れば良いのかと考えていただけだ。
気にするな」
「はぁー・・・自分にはよくわからないですけど、
ペトラなら知ってるんじゃ・・・って、あいつ遅ぇな」
今日の午前中はオルオとペトラが着いてくれる予定だが、
待ち合わせ時間になってもペトラが現れないことに
オルオは心配顔になった。