過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第28章 新兵の料理
グシャァッ!と読んでいた紙の束を握り潰すと、
抑揚のない声でリヴァイが「今まで蔑ろにしていたツケだ」と
吐き捨てた。
どうやら彼も今までの食事に不満を持っていたらしい。
エルヴィンが握り潰した紙をハンジ達が拾い上げ読むと
「エルヴィンに対する悪口も書かれてんじゃん」と
ゲラゲラ笑った。
リヴァイやミケも内容に目を通すと失笑し、
エルヴィンの味方をする素振りを見せない。
額に手を当てていると、
両手に紙の束を抱えたナナシが扉を蹴破って入室してきた。
今度は何の嘆願書だ?と疑問に思っていると、
束をエルヴィンの前に置いたナナシが「意見書だ」と言ってきたので
目を疑った。
中身を確認すると、確かにそれは意見書で・・・
どんな食材がどのように重要か、栄養がどのように吸収するかなどが
細かく書かれていて度肝を抜かれる。
理路整然と書かれた文章に、ナナシの『壊滅的な説明力』は
どこにもなく拍手喝采を浴びせたいくらいの出来前だった。
もしかして口下手なだけ?
今度からは何事も書面で提出させた方が良いのかもしれない、と
エルヴィンは思った。
「これで予算をぶん取って来れるか?
無理でも憲兵団辺りから色々奪ってこい」
「それは名案だね。ご期待に応えてナイルから色々頂いてくるよ」
エルヴィンは腐れ縁の師団長を頭に思い浮かべて、
容赦なく取り立ててやろうと心に誓った。