過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第24章 ドキドキの治療法
「そろそろ実家に帰ろうかと思ってな。
・・・おい、動くな。今鍼を抜いてやる」
順々に全員分の鍼を抜きながら、ナナシは話を続ける。
「そろそろ潮時というか・・・まぁ、どうしようか思案しておったのだが、
とうとう実家からも帰って来いと知らせが来て・・・。
・・・で、帰ろうかと・・・」
「君の実家はどこにあるんだ?ローゼか?それともシーナ?」
鍼が無くなり自由になったエルヴィンが問い詰めるように言うと、
ナナシはうーん・・・と唸った。
「お主が知らない場所にあるから説明も難しい。
・・・が、一度帰ったら当分帰って来られない・・・・
・・・・あ、忘れる所であった」
何かを思い出したかのように持っていた鞄の中を漁ると、
ナナシは取り出したものをリヴァイに渡した。
「・・・何だ?」
「前に好きだと言っていたであろう?みたらし団子を作ってきた。
イザベル達に供える分と、お主の分だ」
リヴァイは目を丸くして見覚えのある包みを凝視した。
覚えていたのか、と表情を緩め、
イザベルとファーランが絶賛していた菓子を思い出していると
横からハンジが「なになに?」と覗き込んでくる。
「それって食べ物?聞いたことないような名前だけど、
美味しいの?良いな~良いな~何でリヴァイだけが貰えるのさ。
私小腹が空いてきたんだけど・・・」
「・・・離れろ、クソメガネ」
「丁度良いからお茶にしない?私淹れてくるよ」
ナナバがリヴァイの返事を待たず、
お茶を淹れに部屋を出ていき、ぐいぐいと女性陣に押されたリヴァイは
渋々包みの一つを提供してやることにした。
中身を確認していなかったので「足りるのか?」と思ったが、
串に刺さっている団子を分割すれば問題ないだろうと結論付けて
お茶を待つ。
目の前で繰り広げられているエルヴィンとナナシの会話に
耳を傾けながら、椅子やテーブルの用意をしていると
トレイにお茶を乗せたナナバが戻ってきた。
窓から出ていこうとするナナシを全員で抑え、
六人でのお茶会が始まったのだった。