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過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】

第19章 ナナシの能力






「すまないが、私に命を預けてくれ。無駄にはしない」

「ふふん、実に可愛くない小童だ。
昔の方が可愛かったのに残念だ」


鼻で笑ったナナシの軽口にエルヴィンも笑顔で答える。
軽口がナナシの気遣いだとわかっていたから。


「可愛げは無くなったが、良い男にはなっただろう?」

「時々はな・・・。私から見たら常に残念な男だ」

「おや、それは努力しないといけないね」

「全くだ」


余裕を感じさせるナナシの声色を聞いて、
エルヴィンは漸く何故ナナシが地下室ではなく能力の秘密を
明かしたのか理解した。

もう使えない能力ならバラしたところで痛くも痒くもないのだ。

しかもナナシの能力を見た者は限られており、
例え「彼には凄い力がある」と言っても誰も信じないだろう。

やられた、と思わなくもなかったが、
今は壁内に無事帰ることの方が大事だ。
帰ってからゆっくり問い質せば良い。


「出発までまだ時間があるから一休みしよう。
ナナシ、一緒に来なさい」

「・・・いや、私は一人が」


仲間と思われる老人の死で彼も一人になりたいのだろうとは思ったが、
ここは壁外。

一人の勝手な行動が全体を危険に晒すのだと言い聞かせると、
彼は渋々ながらも従った。

自由奔放な彼だが、そういう事は弁えているらしい。

常に一定距離を保とうとするナナシに、
エルヴィンはいつか普通に接してくれる日が来る事を願った。





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