過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第18章 『迅鬼狼』のアジト
自分の記憶を頼りに辿り着いたそこは元々普通の家で、
今は屋根も抜けている廃屋になっていた。
「ここか?」
「あぁ・・・」
「これじゃあ、期待無さそうだね~」
リヴァイとハンジの声を聞きながら、屋根の無い屋内に入ると
木の床がギシギシと音を立てた。
一応来たのだから・・・と物色を始める5人を尻目に
ナナシは家の床板を注意深く探る。
ある箇所で立ち止まり、爪先で床をノックするように何度も叩いて
コツンと他の場所とは違う感触を確かめた。
力の強そうなミケに床板を退けて欲しいと頼むと
エルヴィンに目配せを送ったミケは何を言わずに床板を剥がす作業に移り、
他の面々は興味深そうにその作業を見守る。
床板は大きな一枚板で、それを退かすと地下への階段が現れた。
「こんな所に地下があるなんてワクワクする」
「秘密基地みたいだね」
女性陣の楽しそうな声に対し、男性陣の表情は堅かった。
何故、こんな街中に地下への入り口があるのか・・・。
そして何故ナナシがそれを知っているのかという疑問が頭を過る。
念のため、入り口に見張りとしてナナバには残ってもらい、
躊躇なく階段を下りるナナシに続き、
エルヴィン達も階段を下りた。
階段を下り切ると横には狭い通路があったが、
石の壁があるだけで部屋や物資があるようには到底見えない。