過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第17章 物資と信用
それから何回かの進路変更の後、
調査兵団は目的地である街に辿り着く事が出来た。
すっかり日も沈み各自が休息を取る中、
ナナシは人目を避けるように自分の装備の確認を行っていた。
「・・・・残りの弾が1発、か・・・」
急な壁外への出発に加え、スピード重視で
行きにも数発使っていたせいで残弾が無かった。
無い物は無いので残りの一発を銃に込めていると、
どこからか奇声が近づいてくるのが聞こえた。
雄叫びにも似たその奇声の方向へ視線をやると、
メガネをした茶髪の人物がぶつかる勢いでナナシに突進してきて
興奮気味に話し始める。
「ねぇねぇ!その銃見せてぇぇぇ!!
巨人が狂ったんでしょ!?どうして!?どうやって!?
その銃に何か秘密があるのっ!?
あ、それとも銃弾の方に何か仕掛けがっ!?
貸して貸して!」
叫びながら銃を奪おうとするハンジにナナシは若干引いた。
エルヴィンとは違った意味で狂っているようだ。
あと1発しか撃てないのに、
ここで無駄に発砲されたら堪ったものではない、と必死に抵抗していると
「ハンジ!」という声が聞こえ、ハンジの動きが制された。
「落ち着け」
「離してぇぇ!!銃を!!銃の秘密が解明されれば、
巨人の秘密もぉぉぉぉ!!!」
どこから現れたのか、
ミケがハンジを羽交い締めにして止めてくれていた。
興奮が収まらないハンジはバタバタと暴れて手がつけられない状態で、
流石のミケも大変そうだった。
「落ち着きなさい、ハンジ」
程よいバリトン声が聞こえ、
そちらを見遣るとエルヴィン、リヴァイ、ナナバが
こちらへ歩いてくる姿が見えた。
ナナバがミケに加勢しハンジを抑え込んでいる間に、
エルヴィンとリヴァイがナナシの前に立つ。
「その銃をハンジに見せてやってくれないか?
これでは手がつけられない」
静かな声色だったがエルヴィンの纏う空気は威圧的で、
拒否は許されないだろうと大人しく銃を差し出すと、
彼はそれを受け取り検分を始める。
「弾は・・・これだけかい?」
弾丸数を確認したエルヴィンの問いに頷くと、
何を考えているかわからない声で「そうか・・・」という言葉が
返された。