第1章 ファーストキス
「え?」
「……ねむ……ぃ」
二宮さんは目を擦りながら、そう答える。
「あ……と……寝室は、2階なので……」
あたしは、寝室に二宮さんを案内した。
「ちゃんは、何処で寝るの?」
「あ、あたしは、リビングで寝ますよ。だから、二宮さん、このベッド使っていいですよ」
「ねぇ、このベッドって、下から出てくるやつ?」
「え?…そうですけど……?」
あたしが軽く片付けながら答えると、名前を呼ばれた。
「はい?……っ……」
振り返るとすぐそばに、二宮さんの眠そうな顔があった。
「ちゃんも、ここで寝てくれる?」
「……えっ!?」
「ベッド、2つあるのに女の子のちゃんがリビングのソファーで寝るなんてさ、あり得ないでしょ?」
……??
あの、眠すぎて、二宮さんおかしくなってます?
とは、聞けず……。
「…………そ、そうなん……ですか…?」
「ちゃん……」
「……へ……ぇっ!…あのッ……」
二宮さんがどんどん近づいてあたしは、ベッドに座り込んだけど、それでも二宮さんは近づくのを止めない。
「……ぁ、あの!」
あたしの声で二宮さんは、やっと止まってくれた。
けど……。
何故か離れてくれません……。
「……ぁの……」
「???」
いやいやいや、ハテナマークを浮かべるのはあたしの方ですって。
「……あ、の、ここに寝るので、は、離れてくれますか?」
あたしが折れてそう言うと、ふにゃっと笑って二宮さんは離れた。
「よかった。」
もう、この人、なんなの…………?
扱い方が分からない。
あたしは、気を取り直して下からベッドを出した。
「ちゃん、ありがとう♪」
「いえいえ……。
もう、寝ますか?」
「…うん。ちゃん……?」
…………………………………………………………。
何事もなかったかのように、二宮さんは眠りについた。
やっぱりこの人、最低。
あたしは、生まれて初めてあり得ないくらい睨んだ。
なんなの?
あなた、あたしに何がしたいの?
あなたみたいな人が仮面被ってどんな得をするの?
悪いけど、あなたがどんなことしてきても、その手には乗らないから。