第37章 -衝突-(青峰大輝)
ヤバ…この時間て次の快速…
10分も待つんだったっけ…
乗り換えの駅…
行き交う大勢の人の流れに
乗りながらも、
駅構内の電光掲示板を眺める。
耳にはイヤフォン…
行きたくない会社へ行くための、
お気に入りのアーティストの曲が、
周りの音を
シャットアウトしてくれている。
『次に発車するのは
1番線の各駅停車○○行です。
お急ぎのお客さまは…』
でも、アナウンスのマイク音は、
うっすら聞こえてくる。
あと3分!あっち乗れる‼︎
人混みをすり抜けながら、
運動不足で、
すっかりなまった身体に鞭をうち
さっきよりもスピードをあげる。
ドンッ‼︎
「…⁈うわっ…すみ…」
「ちっ…」
小デブなおじさんが、
急に方向転換してきて、
小走りのわたしと思い切りぶつかった。
って、自分が急に
方向変えたんじゃーん‼︎
挙げ句の果てに舌打ち⁈おっさん‼︎
って、言い返したいのは
山々だったけど、
実際この間はスローモーション…
言いたいコトは一言も言えず、
体格差と、自分の走っていた勢いで、
わたしは思いきり
バランスを崩していた。
ギュッ…
「おわっ…っぶねぇなぁ‼︎」
…⁈
でも、倒れるのを覚悟していたのに、
わたしは倒れなかった。
わたしは倒れるどころか、
知らない男のコに抱き止められていた。