第20章 -年上-(黄瀬涼太)**★
オレはあの頃の…
すみれっちへの気持ちが
嘘だったかのように…
いつのまにか
しずかっちのことばかり
考えるようになっていた。
「黄瀬くん、最近ご機嫌だね♪
調子も良さそうだし♪」
すみれっちのコトが
あんなに好きだったのに…
部活中に当のすみれっち本人に
そんなコトを言われる始末だった。
部活や仕事帰りは、
駅前でしずかっちを探しながら歩いた。
それから暫くして、
久しぶりに土曜日に仕事が入り、
撮影が押したので、
飯を食ってから、終電で帰ると、
駅でバッタリしずかっちに会った。
「しずかっち‼︎」
「ん〜⁇あ〜♪涼ちゃん‼︎
涼ちゃんだぁ♪」
…っ⁈
しずかっちは酔っていた。
そういえば、趣味を聞いたとき、
”飲めないお酒に飲まれるコト”って、
言ってたっスね…。
「あれ〜?涼ちゃん、私服だぁ♪
かっこいいじゃーーん♪」
オレの腕をギュッと掴み、
子どものように見上げてくる姿に、
オレは思わずドキッとした。
「あ〜、コレ、衣装っス。
今日着たヤツもらったから…。」
「衣装⁇」
そのまま不思議そうに
小首をかしげるしずかっち…。
「…いや…
あ…一応、オレ、モデルっス。」
「えー⁈ウソーー⁈すごーい‼︎
知らなかったーー!」
今度は心底驚いたように
目をパチクリさせ、興奮していた。
か…かわいい…。
「てか、しずかっち、
酔ってるっスよね⁇大丈夫っスか⁈」
「だ〜いじょ〜ぶだよ〜〜♪
ほら〜歩けるも〜ん♪」
オレから離れて歩くしずかっちは、
フラフラしていて、
とても大丈夫とは思えなかった。
「ぜんぜん大丈夫じゃないっスよ〜。
ほら、手!」
オレはしずかっちの手を掴んだ。
「わぁ〜♪涼ちゃん、優しい〜♪
紳士〜〜♪」
そう言ったしずかっちは、
腕を組んで、ギュッとしてきた。
…っ⁈
「あの…えっと…っ⁈」
「どぉしたの⁇」
腕を組んだしずかっちが、
オレを見上げて聞いてきた。
「な…なんでもないっス。」
オレはそのまま歩き出した。
甘えてギュッとしてくる
しずかっちの胸がたまに触れ、
オレはいつもより緊張していた。
「しずかっちは遊んでたんスか⁇」
オレは緊張を紛らわすため、
しずかっちに話しかけた。