第15章 -内緒-(黄瀬涼太)
次の日からは、
校内で2人で歩くと目立つし、
黄瀬くんには
授業中にこっそりメモを渡し、
別々で体育館に向かった。
わたしより先に教室を出たのに、
わたしが昨日の小部屋に着いても
黄瀬くんはまだ来ていなかった。
「すみれっち!早かったっスね!」
わたしより10分程遅れてきた黄瀬くんは
フゥッと息を吐いて椅子に座った。
「女のコ達に捕まってたの?」
自分で言いながら、
心の奥がズキンと痛んだ。
「ま〜ファンのコたちを
ないがしろにできないし…
嬉しくないって言ったら、
やっぱりウソになるしね。」
…ズキン
また痛みが走った。
「そっか。」
「はぁ…おなかペコペコっす☆
すみれっち、早く食べよ!」
「あ…うん。
黄瀬くん…よかったら、これ…」
わたしはお弁当を黄瀬くんに渡した。
「これ、オレに⁈
すみれっちが作ってくれたんスか⁈」
「うん。
昨日美味しいって言ってくれたし、
さすがにコンビニばっかりじゃ
栄養偏るし…お昼くらい…ね。」
黄瀬くんはお弁当を見て
黙ったままだった。
「あ、でも、こういうの、
女のコから貰ったらマズイのかな?」
どうしよう…
余計なことしちゃったかな。
「めっっちゃくちゃ嬉しいッス‼︎」
黄瀬くんがニコニコして言った。
いつもキラキラした笑顔だけど、
今この瞬間の笑顔は、
わたしだけに向けられていると思うと、
いつもより優しい笑顔に見えた。
「昨日めっちゃ美味しかったから、
また食べたいなーって思ってたんス☆
このお弁当あれば頑張れそうッス‼︎」
そこまで喜んでくれると、
恥ずかしくなってきちゃうよ…
「じゃ、勉強会の間は作ろうか?」
「やったー‼︎
でも、勉強会の間だけッスか〜⁇」
ドキン…。
ちょっとスネた黄瀬くんは可愛い。
「だって…わたしがお弁当を
毎日黄瀬くんに作るの変だし、
勉強会終わったら…
お昼休み一緒にいる理由ないでしょ?」
自分で言ってて淋しくなってきた。
お弁当なんか作ってきて、
ちょっと特別な感じしてたけど、
それは今だけ…。
「じゃあ…
毎日じゃなかったらいいッスか⁇」
突然黄瀬くんが
わたしの顔を覗き込んできた。
…っ⁈⁈ち、近い…っ。
「き…黄瀬くん…⁇」