第19章 終末の彼方で
あの頃の私は、とても衝動的で。恋と呼ぶにはあまりにも陳腐で、笑われても仕方なかったかもしれない。だって相手は私のことなんて、何一つ知らないし同じ学校にいることでさえ知らないのに。一方的に好きになって、一方的に告白して、振られて。
笑われるのも、無理はないかもしれない。だって私は彼を一つも知らなかったし、名前と部活と……その姿と、声くらい。
振られて当然だったけど、込められた暴言に隠されて私は言い訳を重ねていた。そうだ、彼がブスだというから、それが断られた理由でブスじゃなければ違っていたかもしれない。
――本心では、そんな甘いことを考えながら。
じゃあ、変わらなくていいや。何かのせいにして、誰かのせいにして、変われないんじゃない、変わってくれないせいだ。周りが、環境が、世界が。
私が今まで変われなかったのは、本当に変わろうとしなかったからだ。
だって、こんな私でもいつかは誰かが好きになってくれるでしょ?
浅ましい心。今思い出すと、本当に嫌になる。けれど、彼はそんなどうしようもない私に初めて手を差し伸べた。眩しいほどの、太陽のように。
「ほら、魔法をかけ直してあげる。おいで」
「……藍くん……っ」
駆け出した、その胸に迷いなく飛び込んでいく。