第36章 合宿の時のお話【影山 飛雄】
ひとしきり午前の練習が終わる
影山
「……………」グイッ
葵
「っ!?
ちょ、なにっ!?」
影山
「ちょっと来い」
葵
(来いってゆうか、既に捕まえて強引に連れて行ってますよね!?)
未だ腕は掴まれたまま、私は体育館の影に連れて来られた
人気のないところで、ガヤガヤした体育館の中とは打って変わって静けさで不気味さすらここにはあった
だからなのだろうか?
目の前で、私の顔の横に手をつく影山が
マジギレよりも怖いと感じるのは………
空いた片方へ逃げようとすれば、塞がれた
逃げ場がなくなり、どうしようかと考え
今度は腕をすり抜けるように潜ろうとすれば、
まさかの自分の脚の間に影山の脚が突っ込まれた
葵
(完璧に逃げ場失った………)
そして何より顔が近い
葵
「かっ………かげやまっ
近い……かお、近いよ………///」
影山
「なんで………」
葵
「ぇ?」
影山
「なんで日向には教えて俺には教えてくれねーんだよ」
葵
「………っ」
影山が怖くてより一層、声も出せなくなる
脚も震えて、気がつけば涙が溜まっていた
影山
「!っっ、悪ぃ……
その、泣かせたいわけじゃねぇんだ」
そう言って、そっと離れた
影山
「俺は、もっと上手くなりてぇんだ
だから、津田のサーブを教えてほしい」