第21章 夏の海【西谷 夕】
葵side
昔、友達と一緒に海へ行った
海の中へ入って、遊んでいた
楽しく遊んでいる内に、どんどん沖より遠ざかっていた
それに気づかなかった私は、足を急に深いところへ滑らせてしまった
バランスを崩してしまった私は、そのまま深いところへ――
当時は泳げていた
だから、友達の皆も安心していたんだろう
だけど、満潮で潮の流れが早くなっていたその時、泳いでも泳いでも、皆がいるところから遠ざかっていく
足がつってしまい、焦りでどうすればいいのかわからず、
ただ溺れていくだけだった
助けてと叫ぶ前に海に、沈んでいた
朦朧とする意識の中で、ただ私は、『ここで死ぬのかな』と感じた
気がつけば、私はテントの下にいた
「よかった!目、覚ました!!」
「死んじゃったんじゃないかって思ったよー!!」
周りにいた友達が、泣きながら抱きつく
生きていた
どうやら、知らない男の人が助けてくれたらしい
それから、海が怖くなった
泳ぐのも、わからなくなった