5️⃣
ソレ偽物だから近付かないで!
いや、本物でもダメだけど!
5️⃣
すぐ行く!
(まぁ…もう居ないけど…。)
「傑?!」
仁美の声に傑が振り向く。
生きている傑に涙が出そうだ。
いや…もう出てる。
傑は急に呼ばれて、いきなり泣かれて困っている様だ。
「……悟の…マーキングが酷いな…。」
傑は呆れた様に困った様に言った。
その声がいつもの傑で。仁美は余計に涙が出た。
傑がスッと仁美の涙を拭った。
久しぶりの傑の匂いに、仁美は目を閉じる。
傑に抱き付きたい衝動を抑えながら、彼の手が自分から離れるのを待った。
「…君は…こっちには来ないんだね…。」
確かめる様に、傑は仁美に聞いた。
「…傑はその道を行くの?」
そう仁美が聞くと、傑は仁美から手を離して、ニッコリ笑った。
何度回帰しても訪れる百鬼夜行。
傑はもうすぐどうしても、その道に行ってしまう様だ。
それでも、あの腕にしがみ付いて縋ったら、また何処にでも連れて行ってくれそうだ。
「……覚えてるって言ったのに……。」
仁美はそう呟きながら、人混みに紛れていく傑の後姿を見送った。
今日は久しぶりに悟から思い切り逃げて。
気の済むまで泣き尽くしたい。
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