その笑顔に仁美はまた涙が出る。
「……知ってたの?」
そう顔を歪ませて泣いている仁美を、悟は抱き締めた。
「仁美が自分の体に鈍感過ぎるんだよ。
知ってた?もう心臓あるよ?音がする。」
そんなの聞こえるの、悟だけだろう。
「…何で…言ってくれなかったの?」
何で悟が仁美の仕事をしていたのか。
何で飲み会でお酒を飲ませてくれなかったのか。
もうずっと前から、悟は分かっていたんだ。
仁美はぎゅっと悟に抱き付いた。
「… 仁美、僕は…。」
あの日の朝、寝ている仁美を見下ろして、仁美のお腹に命があるって分かった時。
あの時の衝撃は一生忘れない。
全身を稲妻で貫かれて、なお足りない衝撃の後に。
正直、純潔、無垢、敬愛
イエスキリストが愛を問うた様に。
それ以上の心を揺さぶる感情。
愛しさだけでは足りずに、自分の命すら捧げられる。
そんな衝撃を生まれて初めて知った。
「…あの時の衝撃を、君自身に知って貰いたかったんだ。
僕の言葉じゃなくて…。」
悟の言葉に嗚咽が出る。
「うっゔゔっ…。」
涙が止まらなくて。
でもそれは……とても尊い気持ちだった。
「で?どうだった?」
「……凄く幸せだった。」
20年間回帰を続けて、それでも諦めずに生きてこれたのは。
この瞬間の為だったのかもしれない。
「悟…愛してる。」
「うん…僕も愛しているよ。」
2人はキスをしながら愛おしそうにその体に触れる。
悟はそっと仁美のお腹に触る。
暖かくて、ずっと触っていたい。
悟にしかまだ聞こえないであろう心音。
僕と仁美の愛の全て。
悟はある事に気がつくと、ニヤッと笑った。
(何だ…男の子か…。)
悟以外なら絶対に許されない仁美の体内。
それを許された特別な存在。
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