コミュニティ
カテゴリー | イベント |
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作成日 | 2015-07-15 02:09:45 |
更新日 | 2015-11-09 20:36:10 |
閲覧 | 誰でも可 |
参加メンバー | 9人 |
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トピック
スピンオフ見本②雨が運んで〜/黒尾鉄朗→夢主(スピンオフ)
「もしもし?聞いてマス?お姉さん。」
『え、あ、はい!?』
「お名前は?」
彼が触れたところは溶けるようにあたたかくて、ジンジンした。
『あ、◯◯です。』
「上出来。」
魔法使いか悪魔か。きっと彼はどちらかに違いない。私はそう思った。魔法をかけられたように、秋雨の音は心地よく、まるで踊るように跳ねる。
名前を聞いたものの、彼は私を”お姉さん”と呼び、何一つ踏み込んだ話をして来ないものだから、私は先程の彼の体温は、夢か何かなのではないかと自分を疑う程だった。
『あの、何故声をかけてくれたんです?』
「あ手のかかる人は嫌いじゃないからな。」
『、、、それは、心外です。』
クククと喉を鳴らすように笑う黒尾くんは、きっと面倒事にわざわざ首を突っ込むような優しい人なんだと私は解釈した。
彼と歩くいつもの帰り道は、まるで違う場所を歩いているように鮮やかだ。道路沿いに連なる店の明かりも、路地裏を照らす頼りない街灯も、雨に霞むクルマのヘッドライトも、何もかもが色を取り戻したようにカラフルで、浮かれて見えた。
『あ、ココです。あの、お礼にコーヒー入れるので飲んで行きませんか?』
白いマンションの前で足を止め、お礼にかこつけて私は思い切って彼を誘った。
「コーヒーじゃ足りないなぁ。」
『え?』
ふわっと揺れた自分の身体は、気付けば彼の腕の中に閉じ込められる。雨に冷えた身体は黒尾くんの少し高い体温で熱を思い出したように、火照る。まるでキスをせがむように顔を近づけてくる彼は、やっぱり魔法使いか悪魔か何か。
「見返り。ちゃんともらわねぇとな。」
『それは、、、君が勝手に、、』
ちゅ
取り戻した色と引き換えに、
私はその瞬間、彼に心を奪われた。
fin.
2015-07-16 22:46:00
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