コミュニティ

HUNTER×HUNTER好きさんとリレーをするだけの会
カテゴリー 小説
作成日 2017-04-28 20:24:54
更新日 2021-05-30 00:15:07
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参加メンバー 2人

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僕の影と逃げ惑う影

リレー小説です。当番のお方が2週間以上お書きになられなかった場合は、その方を飛ばして次の方がお書き下さい。

2017-05-17 18:38:11

めいびす

  • 1.
    【プロローグ】

    僕は、初めから独りだった。

    地面を赤く染める鮮血の海

    その血溜まりの中にある人の死体の山

    その周りを囲むように蠢く黒い影

    それが、僕に残る一番古い記憶。

    そこから僕は始まった。

    そこより前の僕は、どんなものだったのか…

    自分の名も分からなかったのに、“蠢く黒い影”は僕の力だと、何故か分かっていた。

    だから僕は、それを使って生き延びた。

    “僕は死んではいけない”

    僕は何故か強くそう思っていた。

    “まだ取り返していない”

    きっと前の僕は何かを探してた。

    だから僕は、それを探す為に、力を使う。

    「取り返さなきゃ…死ねないもん」

    ◆◇◆◇

    家族が居ない、友達も居ない、それらが何なのか分からない。

    そんな僕が真面に生きていけるわけない…僕は生きる為に盗みをしている。

    街で威張る金持ちだとか、どっかの国の王族だとか貴族だとか…兎に角、デッカイ建物の中で大切にされてる物を盗んでいた。

    闇市(ブラックマーケット)や地下競売(アンダーグラウンドオークション)に売れば、お金を沢山稼げる…それに、そういう所で僕の探してる物を見つけれるかもしれないから。

    そんな生活を続けていると、名無しだった僕に名前が付けられた。

    漆黒の影を自在に操る姿を見た人が、僕を『神のようだ』と言った。

    邪魔者を躊躇なく殺す姿を見た人が、僕を『悪魔のようだ』と言った。

    そして人は僕に、『神のような悪魔(エルメア)』という名前を付けた。

    「テメェ、何者だ⁉︎」

    「僕は、エルメア」

    自分でも名乗るようになった。

    「君の名前は…訊く必要ないね。バイバイ」

    影に斬り裂かれ、目の前の人が倒れて血溜まりを作る。

    僕は独りだった、僕は無敵だった。

    ──あいつらに出会うまでは──
    2017-05-28 20:13:36
  • 2.
    【ヌスビト×ト×トウゾク】

    豪商アオ=ドンキ

    ガウシヤ国の中心街に住む、この国指折りの大金持ちで、ゴリラよりゴリラっぽい見た目のオッサン。

    僕の今回の狙いは、そいつの所有する宝石。

    メインは悪魔の瞳と呼ばれるレッドダイヤモンド…他も全部盗るけど。

    「今回は、いつもより厄介かも…」

    教会の屋根の上に立って、ターゲットの屋敷を眺めながら呟いた。

    アオ=ドンキは、自分の護衛と屋敷の警護に複数の“念能力者”を雇っているらしい。

    念能力者…詳しくは知らないけど、僕にとっての『影』みたいな特殊能力を使う人間の事を指す言葉だとか。

    「殺しにくい邪魔者…居るかな」

    更に今回は、厄介な事がもう一つある。

    どうやら僕以外にも、アオ=ドンキの屋敷を狙ってる奴が居るらしい…街の噂で聞いた。

    先に盗まれたら、そいつらから盗まなきゃいけなくなる…やる事は変わらないけど、それで逃げられたら仕事失敗だ。

    だから、早く盗りに行こ…

    「さっさと盗ってさっさと逃げよ」

    僕は、教会の屋根から飛び降りて、着地と共に走り出した。

    ◆◇◆◇
    2017-05-28 20:14:43
  • 3.

    闇夜に紛れるように静かにしなやかに屋敷に侵入した。
    ここまでは何も問題ない。いつも通りだ。


    「(……さて)」


    高級感漂う綺麗で大きな窓から差し込む月明かり。
    その幻想的な光に照らされ目を細めた。が、それも一瞬ですぐさま目を逸らし行動を開始した。

    ノロノロしてる場合じゃない。
    面倒な事になる前に、僕が先に盗らなきゃいけないんだから。


    ♢♦︎♢♦︎


    宝石やら腕時計やら、とにかくお金になりそうなものを盗れるだけ盗った。
    でも、まだ今回の“ターゲット”を盗ってない。


    ーー悪魔の瞳。それを手に入れるまで帰るわけにはいかない。


    「誰だ貴様!」

    「……君には関係ないよ。名乗ったって意味ないから」

    「何、!? …っぐ……!」


    何かを言おうと口を開いた相手に容赦なく影が襲った。
    切り裂かれたソレは地に伏せ呻く。血が広がっていく。


    「……貴、様…。まさか、エル…メア……か」

    「あれ、まだ生きてたんだ」

    「悪、魔…め……っ!」

    「僕のこと知ってたんだね。ま、どうでもいいや。だって」


    ーー君、もう死ぬんだから。


    僕が言い切らない内に力が尽きたのか、ソレはピクリとも動かなくなった。
    鮮血に浮かぶ死体に目もくれず、再び歩き出した。

    手応えないな…。“念能力者”とかいうやつじゃないのかな。


    奥の部屋へ向かう廊下でふと気づいた。

    ーー血がついてる。いや、死体がいくつも転がっている。

    もちろん、僕の殺ったやつじゃない。
    なら、誰が……?
    僕よりも先に来た奴ら……つまり悪魔の瞳を狙ってる他の人。
    だとしたら嫌な予感がする。

    急いで奥の部屋の扉を開けた。


    「……それ、僕の獲物なんだけど」

    2017-05-29 20:11:49
  • 4.

    声をかけた先には2人の人間が、『悪魔の瞳』の鎮座している台の脇に武器を構え立っていた。

    1人は女で、蛇の様な何らかの機械を持っている。

    もう1人は男で和装だ。

    女の方が何か言いたげに口を開いた。

    「あなた「僕には関わらない方がいいよ。ばいばい」

    ああ、また思い出しちゃいそう。

    暗い影を振り払うように、今影を千切って作った即席ナイフを2人に投げつけた。

    そのナイフは素早く払いのけられたが、

    「きゃっ…」
    「ぬうう」

    直ぐ後ろに続けて投げたナイフは払われず命中。

    男は胸の真ん中、女は眼鏡にヒットした。

    淡い光の中手早く作ったナイフなので強度が不十分。眼鏡を割るくらいで大した威力は出ない。

    「あれ、今思いついた戦法なんだけど意外と使える」

    周りが暗いなかに溶け込むように黒い刃物を、それ自身に足りない威力を補うよう大振りで矢継ぎ早に投げながら独りごちる。

    それが聞こえた様で、叩き落としながら男の方が目を見開き叫ぶ。

    「んだぁコイツ!おいシズク!さっさとぶち殺すぞ!」

    「言われなくてもやってます」

    サッと風の音がしたかと思うと、いつの間にか近づいていた女が下から妙な器械を振り上げたが空振りに終わる。

    「予備動作大きいねお姉さん」

    気配に気付いた時には地面に手をつき、目の前に向かって宙返りをうち避けていた。

    「モーション大きいのはどっちですか」

    直ぐ横に来た男に気付かず再び振りかぶる女は馬鹿なのだろうか。

    「あーあ、危ない」

    ガツンと痛そうな音がした。目を凝らすと、やはり男と女が衝突していた。

    「っなんで…!」

    「僕が宙で逆さまになっていた時、そいつがこっちに来てるの見えなかった?」

    打ち所が悪かったらしく2人とも動かなくなった。
    念のため、眠るように命令をこめた僕の影を切り取って2人の影に混ぜた。

    「じゃあお宝は僕の物って事で」

    這いつくばる2人をわざと見下ろしながら、既に割られていた台座から無造作に『悪魔の瞳』を摘み上げる。

    目的の物を鞄に仕舞い、窓に脚をかけた。

    「光が淡くて残念だったね。僕の独壇場。

    ははは、それじゃまた会う時まで。」

    弱々しい月光を片身に浴びつつ心の籠らぬ笑い声をあげ、僕は闇に飛び込んだ。


    ◇◆◇◆
    2017-06-14 21:27:51
  • 5.
    「上手くいった」

    やっぱり邪魔者は居たけど、無事に『悪魔の瞳』も手に入れた。

    「闇市……いや、今回は地下競売にするか」

    豪商自慢の宝だ、地下競売の方が高く売れるだろう。

    屋敷を出た僕は、庭木に登って、外壁に飛び移った。

    そこでふと、さっきの2人組の事を考える。

    さっさと眠らせたから実力は大して分からなかったけど、雰囲気的には強そうだった。

    理由は一つ、屋敷の警備と違って、僕を見ても動揺しなかったからだ。

    慣れてる…つまり対応する自信があった…つまり強い。

    「……まぁ、もう関係ない話だけど」

    ピンッ パシッ

    指で弾いた2枚のコインを、再度手に取り眺めてみる。

    「金貨かと思ったんだけど……違うのか、残念」

    さっきの2人組それぞれが持っていた、蜘蛛の絵が刻まれたコイン……

    それをポッケにしまって、僕は城壁から飛び降りた。

    ◆◇◆◇

    翌日の朝

    昨夜のうちに他の町へ移動していた僕は、睡眠もそこそこに空腹の為手近な店に入った。

    適当に注文して、それらを腹に収めてく。

    食べ終わったらたっぷり寝て、その後地下競売だ。

    「…おい、見たか?今朝の新聞」

    ミートボールを口に突っ込んだ所で、カウンター2席向こうの話し声が耳に入って来た。

    「見た見た。中心街で『幻影旅団』が出たんだよな」

    「ドンキ様の宝石コレクションを丸ごと盗んじまうなんて、凄えよなぁ!」

    「!」

    つい昨夜の僕の事だ。

    「幻影旅団……」

    あの2人組の事か…奴らの仕業という事になっているらしい。

    僕は昨夜、僕を見た全ての人間を殺している…狙い通り、エルメア(ぼく)が居た事は知られてない。

    じゃあ今回は、毎度面倒な追跡・報復者の心配が無い訳だ…この街では少しのんびり出来るかもしれない。

    そう考えた僕は、少し…食べる速度を落とした。

    ◆◇◆◇
    2017-07-09 19:48:42
  • 6.
    適当に腹ごなしをした後、僕は眠気に誘われるように木の陰に寝転んだ。
    誰もこないような所だし、仮に来たとしても気配で分かるから問題はないだろう。

    起きたら地下競売に行こうか……。頭の中でこれからの行動を考える内に、瞼が重くなり意識が遠くなっていった。


    ♢♦︎♢♦︎


    「……ん、」


    ぱちっと目を開いた。暫く視界がぼやけていたが、ひらりと宙を舞う何かを咄嗟に捕まえると同時に意識が覚醒する。


    「……何だ、ただの木の葉か」


    誰かの攻撃かと思った。
    掴んでいる葉を眺め何もない事を確認して、小さく息を吐いた。
    葉をその辺に放って、立ち上がる。

    服に付いた草などを軽く払い、ぐっと伸びをして地下競売へと向かった。



    街の中を歩きながら、手持ち無沙汰にコインを弄る。あの二人から奪ったやつだ。

    彼奴ら幻影旅団だって聞いたけど、コレ高く売れたりしないかな……。無理だな。僕が仲間だって疑われたら最悪だし、やめとこ。


    ピンッと指でコインを弾き、上から降ってくるそれを掴んだ時、ふと誰かの視線を感じた。
    警戒して辺りに注意を払うが、誰のもので何処からなのかはっきりと分からなかった。

    それを不快に感じ、僅かに顔を歪める。コインを懐に戻し、早く立ち去ろうと足を踏み出すと、どんっと軽い衝撃に襲われた。


    ハッとして顔を上げると、黒髪で物腰の柔らかい雰囲気を持つ男性が立っていた。誰かと電話をしているのか、耳には携帯電話が当てられている。


    「っ……」


    一瞬だけ目が合い戦慄した。その雰囲気とは裏腹に、ゾッとする何かがそいつにはあった。
    本能的にやばいと感じたのか、僕は足を後ろに下げていた。


    「……あ、すみません」


    眉を下げ申し訳なさそうな顔をして謝罪をするそいつに軽く会釈し素早く離れる。
    絶対に一緒にいたら危険だ。


    かなりの距離を進んだ頃、ちらりと後ろを振り返るがさっきの奴は其処にはいなかった。
    誰だったんだ、あいつは……。


    「……?」


    ふとポケットに手を伸ばすと、手に触れるはずのものがなかった。先程まで其処にあった物ーーコインがなくなっていたのだ。

    何処かに落としたのだろうか。でも金目じゃないし、なくても問題ないな。
    そう思った僕は当初の目的のため、一歩を踏み出した。

    2017-07-18 16:01:34
  • 7.

    ◇◆◇◆

    付近にあった、この街の名物だというおかしな地図を確認したところ、少し北に行って小さな川沿いをしばらく進み、“イエノキ”という愛称の巨大な老木のある地点からまた南下すれば、人に会う事無く会場にいけるようだ。

    しかし、本当におかしな地図だな。建物が紙面から飛び出ていて、まるでこの街をミニチュアにしたかのようだ。

    人の群れも蠢いていて、なんとご丁寧に棒立ちの僕も突っ立っている。

    右腕を頭上に掲げてみると、5000分の1のサイズのごく小さな僕も、その小さな腕を挙げているように見える。

    横にあった注意書きを読むと、この地図に触れる事は禁止されていた。

    なんでも、中の小さな人を潰すと、連動して実際の人も死んでしまうらしい。

    過去に事件でもあったのか、頑丈そうなガラスで囲われている。

    少し悪戯心が疼いたが、下手にガラスを壊すと僕にも危険が降りかかりそうなのでやめておく。



    しばらく眺めていると、あるものが目に入り背筋が凍った。

    ここからは遠いところだが、先の黒髪の男がいたのだ。

    5000分の1になろうが、例えようの無い不気味さ、無機質さが、奴の存在を声高に叫んでいる。

    あの不愉快な感覚がまざまざと蘇り、また半歩後ずさった。

    逃げようと逸る心を抑え込みつつ観察してみると、更に不運なことに、こちらの方角に向かって歩みを進めているようだ。

    このままここにいれば……また会ってしまう確率が高い。

    この街にもう用は無いし、僕はさっさと北に向かう事にした。

    ◆◇◆◇

    街から、奴から逃れるように早足で歩いていると、川に突き当たった。

    かなり汚れていて、近辺の繁栄した街の真実を物語っている。

    ヒトの自分勝手さに呆れながら、それに沿って更に歩みを進めた。

    ◇◆◇◆

    2時間ほど歩いただろうか。漸くするとイエノキの一部が見えてきた。

    やはり大きく、飛び出ている一つ一つの枝がそこらの若木のような大きさだ。

    「木の中で暮らせちゃうくらい大きいんだっけ…?」

    あの地図の横に書いてあった情報を思い出し、その瞬間少し嫌な予感がした。

    奴は地図の“南”から地図のある方角に進んでいた。

    つまり、僕と同じルートを通る事もあり得る。

    急に陰り、雨が降り始めた。

    更に見えつつあるイエノキが、心なしか邪悪に見えた。
    2017-07-24 20:02:59
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