第1章 歌うことこそ
その表情が誰に向けられたものか…なんて。
知りたくないな…なんでかは分からないけど。
「ふーん…まぁ、頑張りなよ」
「え?あ、おぉ!はいはいっ」
返事がおかしいよ、相変わらず。
……………やっぱりみきは面白いや。
自然と頬が緩む。
……………………………
「あ、そういえば」
「ん?」
「ボクを探してたって聞いたけど…何か用事?」
ここに来た理由を忘れるところだった。
ボクがそう言った瞬間、みきは思いきり立ち上がった。
「そうだった!藍ちゃん!」
「え?あ、はい」
思わず敬語になってしまった。
「事務所の横にさ、カフェ出来たじゃんか。そんでねー買ってきたぞ!」
「何を?」
「シュークリーム!」
シュークリーム………
「一緒に食べよう!藍ちゃん!」
みきからのお誘い。
断る訳がない。
「うん、いいよ」