第3章 どこでもない場所
気が付くと、私は綺麗な浅瀬に、仰向けに倒れていた。例えるなら、現世のネットのアーカイブで見たウユニ塩湖みたいな場所だった。
透き通った水面が鏡のようになって、空が映る。
なんだか何も考えたくなくて、寝っ転がったまま夕暮れの色をした空をぼんやりと眺める。
水平線がくっきりと見える。遮るものなんて何もない果てしない天球の真ん中に細い三日月が浮かんでいる。
(三日月は夕暮れに沈む姿しか見れないのだと、優しく教えてくれたのは誰だっただろう…)
明けの三日月にしても、たしか夜明けのときに東の空で輝くだけだから、明らかにこの空はおかしい。
なにがあったんだっけ。ここは何処だろう。
砂の上に寝ていたせいで体が痛い。
家のベッドの感触が懐かしい。もう長らく家に帰っていない気がする。
体を起こして、さっきまで水に浸かっていいたからびちょびちょになった髪や服を絞ろうとして、気付く。
濡れていない、乾いている。
この水はホログラムなのか。にしてはやけに寄せては返す波の感触がリアルだけど。
月がおかしかったのも空間自体が幻影技術を用いていたからなのかもしれない。
そう結論ずけて、状況が飲み込めないなりに
「綺麗なホログラムだなぁ…」
とひとり呟く。
「ほろぐらむ?なんだそれは」
背後で男の人の声がした。
そうだ、ちがう。ホログラムじゃない。
私は本丸にいて…
結界を張り終わったら、ドアを開いたら三日月さんがいて、それで、それで、なぜか真名を握られていて…
おいおい、これが噂の「神隠し」ってやつ!?!?!?
背後ではははと笑う声がする。振り向かなくたって分かる、三日月宗近だ。
ここは三日月宗近の神域だ。