第4章 安土城城下
安土城までの帰り道、とある小間物屋に立ち寄った。
琴葉のお見舞いに何かプレゼントしようと思った。
「(どれも素敵。でもこの髪飾りが一番似合いそうだし、琴葉の好きそうなものだわ)」
手に取った髪飾りは白い椿の花で、これにしようと即決し勘定を済ませた。
「(私もこの時代で働いて、秀吉さんにお金返さないと)」
織田軍の世話役とはいえ、たくさん何かをすることはないだろう‥
女中として働こうか、どこかの甘味処とかで働こうか、、
考え事をしていると突然、後ろから声をかけられた。
「美桜さん?」
ハッとして振り向くと、佐助くんと幸と呼ばれていた男がいた。
「佐助くんと、幸‥さん?」
「幸でいい。」
「わかった。それで、幸と佐助くんはなぜここに?」
思っていた疑問を聞いてみると佐助くんが答えてくれた。
「美桜さんと琴葉さんをちょうど探してたんだ。幸は流しの行商人ってところ。琴葉さんの姿が見えないけど‥」
「琴葉は、熱を出してて、今寝てる。私達を探してたって‥?」
私達の真面目な空気を察したのか、幸は店に戻ると言って去っていった。
「幸は優しいね。気を使わせてしまったかな」
「幸はぶっきらぼうだけど、優しいんだ。わかってくれてありがたい。それで、本題に入る。三ヶ月後には帰れるかもしれないって話たのは覚えてる?」
「うん。そこで秀吉さん達が来て、話が中断したんだよね」
その日の記憶を思い出す。あの日は散々だったな。
「突然消えてごめん。見つかったら少々面倒事になると思って‥
三ヶ月にワームホールっていう時空を飛び越える現象がまた起きる。場所は本能寺だ。それまでに何としてでも三人生き延びて、現代へ帰ろう」
「本能寺‥わかった。教えてくれてありがとう。琴葉にも伝えておく」
「うん、助かる。それと、この時代の人たちには自分達が五百年後から来たってのはあまり言わない方が良い。あと、恋愛感情とかも持たない方が良い」
「そうでね、未来人ですって言ってももっと怪しまれそう‥って、恋愛感情?ないですよ、そんなの。こんな物騒な世の中なのに」
「まあ、とにかく気をつけて。じゃあ、俺はこれで‥」