第3章 安土城
秀吉さんの丁寧な地図のおかげで、迷う事なく光秀さんの御殿に着いた。
女中さんに光秀さんがいる部屋に通され、なぜか政宗さんもいた。
「光秀さん。家康さんの代わりに書状を届けに来ました」
「受け取った。だが、家康ではなく、お前が‥?」
「実は、琴葉が熱で倒れて今、家康さんが看病してくれているんです。それで、代わりに私が届けに来ました」
「ほう‥俺もお前に用があるから、丁度良い。お前達、信長様と賭けをするこ事になったんだろう?」
「ええ、まあ、はい」
光秀さんの妖しい笑みが目の前に迫り、低い声で呟かれた。
「悪い事は言わない。お前達があのお方に勝てるはずがない」
「まだ賭けの内容すらわからないのに決めつけはよくないですよ」
「そうだぞ、光秀。俺は、良いところで掻っ攫うに賭ける」
政宗さんも話に加わり、余計に会話に拍車がかかる。
「では、俺は泣きを見るに賭ける」
「私は、泣きも見ず、攫われもせずに二人で勝つに賭けます」
「おもしれえ。あと、俺のことは『政宗』でいい。敬語も要らない。琴葉にっも伝えといてくれ」
「え、わかり‥わかった、政宗」
「俺のことも呼び捨てでいいんだぞ、美桜」
「光秀さんを呼び捨てにするとなんか起こりそうなので遠慮しときます」
しばらく、他愛無い会話をして、私はお暇した。
「あいつが、体術ねー」
美桜が去った後、二人は美桜と琴葉について話していた。
「ああ、あの見た目からしてあり得ないとは思うが、御館様もおっしゃっているし、何より昨夜本人の口からも言っていた」
「勇敢なこった。機会があれば見せてもらいたい。琴葉の方も実は体術できたりして‥」
「いや、それはないな。ずっと美桜の後ろにいた。だが、あいつもあいつでおもしろそうだ」
くくっと笑う光秀に政宗は呆れ混じりにため息をついた。
「あんまり、あいつらをいじめるなよ?」
「ふっ。それはどうだろうな、あいつら次第だ」
光秀に意地悪されている二人を想像し、政宗は「まあ、おもしろいか」と呟いたのであった。