第3章 お嬢の彼女 千切 豹馬
もどかしい気持ちのまま数ヶ月が経った頃だ。
『えっ!?豹馬が試合に出る!?』
「そうなの!エマも応援に行くわよ!!」
虎雪さんから豹馬が試合に出ると聞いた時、凄く嬉しかった。
でも私は迷った。
何故なら…
「喧嘩したままだから行かない!?何言ってんの!豹馬のことなんだから喧嘩してることすら忘れてるわよ!」
『でも…連絡も全然つかないし…』
「あー、母さんが昨日聞いたら練習に集中させる為にスマホとか没収されてるらしいわよ!」
『そうなの?…でも、やっぱり…』
なかなか行くと言わない私に痺れを切らした虎雪さんはある提案をしてくれたのだった。
『凄い大きい…』
「ねっ!ほんと広い!あっ、エマの席は此処ね!此処ならあんまり豹馬からは見えないと思うよ!」
そう、虎雪さんの提案とは豹馬からは見えにくい席で応援すればいいと言うことだった。
大きなスタジアムは圧巻だった。
しかも相手はあのU-20…
そんな大きな試合に豹馬が出るなんて…
『ッ!!豹馬…』
U20の試合で見た豹馬はあの頃のように輝いていた。
サッカーを続けてくれて良かった…
心からそう思った。
ところが…
『ハッ!豹馬…ッ』
豹馬の脚が止まったのだ。
まさか膝を…?
不安でいっぱいだった。
交代を余儀なくされた豹馬、その顔は凄く悔しそうな表情をしていた。