第3章 お嬢の彼女 千切 豹馬
あの日のことをずっと後悔していた。
怪我をしてから豹馬がサッカーから離れようとしていたのは分かっていた。
正直、豹馬が選んだ道なら私は応援するつもりだった。
でも…サッカーをする人たちを見ている時の豹馬の瞳は何処か寂しげで、でもまだ諦めたくないって気持ちが出ていた。
だから私は彼にサッカーを続けろと言い続けた。
だけど私の言葉はさらに彼を苦しめていた。
彼に謝ろうと思った時には遅かった。
豹馬が強化選手として合宿に行ってしまったと虎雪さんから教えてもらった時、嫌な予感がした。
この合宿で膝をまた壊してしまえば本当にサッカーを諦めなくちゃいけなくなるのだから…
私はサッカーをしている彼が大好きだった。
だって凄く楽しそうにサッカーをするから。
それは小さい頃からずっと…変わらない表情。
サッカー選手になれなくても、サッカーをずっと好きでいて欲しいのだ。
豹馬に連絡しても一向に連絡は返ってこない。
嫌われちゃったのかな…
そりゃそうか、彼女なら彼に寄り添うものなのに。
私は全然、豹馬に寄り添えていなかった。
豹馬の気持ちも考えずにサッカーを諦めるなと言い続けたのだ。
1番悔しいのは豹馬なのに…
豹馬に早く謝りたかった。