【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第4章 後宮の外に毒の華が咲く④
女を見ていた視界が急に暗くなった。
それが壬氏の腕だと分かった瞬間。
月娘の顔は壬氏がの腕の中にあった。
壬氏に抱かれてその匂いに包まれたら、月娘はゆっくりと目を閉じた。
「…壬氏様。」
「大丈夫だ。」
ここには高順と……罪人の女しかいない。
壬氏は月娘を抱きながら、目線だけ女に移した。
壬氏と目線が合うと、女の体がビクッと跳ねた。
後宮では見たことの無い、壬氏の目が冷たかったからだ。
こんな女の為に月娘が怒りを抱いてこの場所まで来た。
月娘には一瞬たりとも吸わしたくも無い空気だ。
この女の為に、月娘の少しでも裾が汚れた事が許せない。
「どうせ何を見たって喋る口は無くなるから。」
壬氏がそう言うと、罪人の女は泣き崩れたが、もう誰も女に目を合わせる事も無くその場を離れて行った。
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「大丈夫ですか?月娘様。」
壬氏が月娘を連れて来たのは後宮の執務室だったから、壬氏は宦官として月娘に声を掛けている。