【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第3章 【R指定】後宮の外に毒の華が咲く③
「私には効かないけど、高侖にはよく効きそうね。」
「………誰だ高侖……。」
月娘の手から、再び壬氏が木箱を奪った。
「……婚姻相手です。枋家とは馴染みで、ずっと私の薬を作ってくれていた薬師です。」
サラッと言った月娘に、壬氏は頭を抱えた。
「……こんなモノを引き合いに出して大人気なかった……。ちゃんと話し合おう…。」
そう言って木箱を月娘の手の届かない場所まで離して置いた。
「………………。」
壬氏は月娘の両手を掴んで、俯いたまま黙っていた。
言葉を選んでいるのだろう。
お互いに喧嘩にならない様に。
「……先程何故待てないのかと聞きましたよね……。」
月娘の言葉に壬氏は顔を上げた。
「!!」
自分を見据えている月娘の顔を見て、また壬氏の体が固まる。
座った目で壬氏を見る月娘の顔はよく知っている。
とてつもなく怒っている時の顔だ。
「……月娘……。」
思わず名前を呼んで、月娘の顔に触れた。
そうしなければ、この顔をした時の月娘は、壬氏から離れると知っているから。