【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第17章 【R18】毒の華は華麗に咲く②
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夏潤の部屋で僑香の泣き声だけが3日続いていた。
「………………。」
月娘は寝台から起き上がり僑香を見て言った。
「いつまで泣いてるの。」
少し諌める言い方に、僑香はやっと顔を上げる。
「っ…だってお嬢様…。こんな事あんまりです…。」
月娘が不妊だと壬氏に伝わり、彼はあの日何も言わずに朴家を出て行った。
その日から泣くのは僑香だけで、月娘はただ自分の体調を整える事に専念していた。
そんな暗い空気の部屋の中に夏潤が入って来た。
顔は穏やかで、彼はまるで全ての煩わしいモノから解かれた開放感が滲み出ていた。
そんな夏潤の顔を月娘は鬱陶しそうに見るのだった。
「俺の小可愛子。」
いつもの夏潤の呼び名に、笑顔で応えていた月娘はもう居ない。
普段なら気に触る月娘の行動も、今の夏潤にはなんとも無い事だった。
「僑香泣く事は無い。月娘が皇室に入らなくても今までと何も変わらない。俺がお前と月娘をずっと守っていくから。」