【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第13章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜④
だけど俺は結局その日、月娘と一旦婚姻をやめる事を言えなかった。
自分に嫁ぐ事を心待ちにしている月娘を見て。
ギリギリまで、月娘が正妃になれる可能性を探そうとした。
ほんの少しの逢瀬は、それでも2人の慰めになった。
壬氏に抱かれて、彼の手が月娘の頬を掠めた時。
月娘はゆっくりと顔を上げて、壬氏を見上げた。
普段は顔を隠している彼は、月娘の前ではその表情を一切隠さない。
月娘は自分を愛おしそうに見る壬氏を見て、ゆっくり目を瞑った。
月娘が目を瞑るのを見て、壬氏は屈んで彼女の唇に顔を近付けた。
2人が初めてキスをしたのはこの時だった。
梅の花の香りに包まれて、思えばこの時が1番幸せだったのかもしれない。
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「………なんだって……?」
壬氏は物凄く苛々した顔をして、高順を睨みながら言った。
一方高順はこの話を壬氏にすれば、機嫌が悪くなる事位分かっていたから、この態度は許容範囲だった。