【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第13章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜④
だから言い出す事が出来なかった。
そんな沈黙の中で先に声を発したのは月娘の方だった。
「…瑞……。」
月娘の声は小さく、声を押し殺した様に聞こえた。
それでも自身の高揚を抑えられずに、腕の中で最愛の人は言葉を続けた。
「私は側室でも正妃でも……瑞のお嫁さんになれる事が嬉しい…。」
壬氏はその言葉を聞いて、一緒目を見開いた。
そして更に月娘を抱き締める手に力を込めた。
月娘はもう疲れていた。
自分を取り巻く悪質な噂にも。
それを増幅させる夏潤の行動にも。
このまま壬氏が冊封を出さなければ、きっと自分は壬氏に嫁ぐ事は出来なくなるだろう。
儚くとも、壬氏があの時最善だと思っていた月娘の婚約者としての地位はそれほど彼女を守っていなかった。
幼い皇太子とその婚約者は、やはり政の中でその運命を翻弄されていた。
ずっと一緒に戦ってくれていると信じていた月娘は。
壬氏よりもはるかに疲れ切っていた。
もうこの幼い少女は気丈に戦う事を諦めてしまっている。