【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第13章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜④
まずは月娘に話をしよう。
大丈夫。月娘も同じ気持ちだ。
月娘以外の妃を娶りたくないと言う俺の気持ちを、月娘はきっと分かってくれる。
少し。
ほんの少しだけ、婚姻が遅くなるだけだ。
東宮が育つまでー。
「『枋月娘は正妃の器では無い。早急な密会を急ぐ』」
夏潤(ハユン)の手には機密に送られたはずの竹簡があった。
それを面白らそうに読み上げる夏潤の顔に、月娘はうんざりそうな顔をした。
「……嬉しそうですね…夏兄様…。」
「嬉しいに決まってる。お前がどんどん宮入りするのが遠のくのだから。」
これはちゃんと相手に届けてやろう。
そう言いながら夏潤は竹管をしまった。
新しい侍女に体罰を与えて実家に送ったのは夏潤なのだろう。
それを月娘のせいにして噂を流したのも夏潤なのだろう。
(…………………。)
あの時に、たった一つの夏潤の過ちを被った為に、夏潤はもうその気持ちを隠す事もしなかった。
ー月娘を絶対に宮入りさせない。