【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第8章 【R指定】花街に毒の花が咲く④
「……壬氏様は、昔から月娘様にはああでしたよ…。」
「え?」
高順の言葉に、僑香は記憶を呼び起こした。
僑香からすれば壬氏は月娘を避けてばかりだったが…。
確かに昔…。
それは本当に2人が幼い頃。
壬氏は今の様に、ずっと月娘にへばりついていた。
「安氏様が壬氏様が1つのおもちゃで遊ばない様にと気に入ったおもちゃを乳母の水連様に隠す様に指示してから。壬氏様は月娘様を取られない様にと避ける様になったんです。」
まだ7歳ほどの頃の話しだ。
月娘からしたら、壬氏が『初めて』自分を避けていると困惑していた時期だ。
「あの頃を覚えていますか?東宮になる壬氏様には、月娘様の他にも、皇太后様の血縁の王家(おうけ)のご令嬢。枋家と対立する皇室の高位の武官のご令嬢。沢山のご令嬢が壬氏様の正妃になるべく声がかけられていました。」
その時は、まだ月娘が正妃になる唯一無二では無かった。
月娘がその地位を固めたのは、後に宮女を集めて、学問を教えてふるいにかけられた10歳の時だ。