• テキストサイズ

【名探偵コナン】Redo*misty【降谷 零】

第3章 予兆と微票。


大人のアレコレはいずれにせよ、沖矢に隙があったとは到底思えない。
それに今までの行動や言動を見ても、記憶のない風を装っている線は消えた。
だからこそ、こちら側に連れてきたのだ。

「な、なんで…」

記憶喪失という不確定要素が残るうちは、こちら側の様々な事情まで伝えるつもりはなかった。
沖矢昴とコナンの正体は、それの最重要事項に含まれている。
ひとつの綻びは、糸のほつれたセーターのようにはらはらとほどけてしまう。
に記憶がないことを侮っていたとコナンは後悔した。

『…さぁ、何となくよ』
「なんとなくって…」

仮にも組織に所属していた人間だと思い知る。
そして初対面の時にから聞いた、"感覚"の話を思い出して身震いさせた。

大きく息を吐いて、沖矢は変声機を切った。

「まさか、ここまでとはな…」
『…ほら、やっぱり』

は満足そうに、口元にゆったりと弧を描かせた。

さて、沖矢と手榴弾男が同一人物だと知れてスッキリしていた。
自身の感覚に間違いはなかったのだ。
それならあの男は、一体誰なのだろう。

『沖矢さん、あなたにそっくりな…、顔に火傷のある男は知ってる?』
「会った、のか…?」
「なんで…」
『列車の廊下で、偶然に』

場の空気が凍てついたような気がする。
2人とも険しい表情を浮かべている。

『知ってるの?』
「その人は、ベルモットだよ」
『ベルモット?』
「彼女のコードネームだ」

ミスティーはカクテル、ベルモットは確かワインだったはず、両方ともお酒の名前だ。
もしかして他にもジンとかウォッカとか、バーボンとかもいたりするのだろうか、まるで呑兵衛集団か何かかなと思ってしまった。

それにしても、『彼女?』とは。
すれ違ったのは上背のある、手榴弾男と遜色ない体格だったはず。

『それも変装なの?』
「あぁ、そうだ」

それが本当なら変装どころではない、マジックのようだ。
しかし、それなら合点もいくというもの。
彼のあの不可解な「俺が訪ねてきても、だ」という言葉を思い出す。
降谷に変装した誰かが、自身の元を訪れる可能性があったのかもしれない。

そうなればきっと無事ではいられなかった。
癪だけれど、偶発的とはいえ沖矢に救われたこととなる。

結果的にも救われているのだけれど。
は少し口惜しさを感じた。
/ 121ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp