第3章 予兆と微票。
呼吸が落ち着くまで、空気を送られ続けた。
どれくらいの時間がたったのか、しだいに正常な呼吸が戻って来る。
『うぅ…っふぅ…ぅ…何で…』
男を睨みあげた。
「死んではいないと言っただろう」
『あ、あんな大きな爆発音…。見てもいないのに……何でわかるのっ……』
力のはいらない拳で、男の胸を叩いた。
以前にもこうして、男の胸を叩いたことがあるような錯覚を起こした。
それは無意識に口から溢れた。
『なんで、わかるのよ…ライ…』
その言葉をが認識する前に、ライと告げた唇は彼の唇で塞がれてしまった。
後頭部を抑えられて、激しくて深い…、せっかく落ち着いた呼吸も絶息してしまいそうに飲まれていく。
『っっん!……ゃっ、んぅ!!』
何故こんなことをされているんだろう。
意味がわからない。
目の前が徐々に霞がかって、頭も身体もふわりと軽くなる。
彼とあの女性は無事なのだろうかと、呆然と考えた。
脳がぴりぴりして、手の先がうっすらと痺れてきた。
自分に口づける相手にうつろな視線を合せる。
唇と、舌の感覚、それに香…
『…ほら、やっぱり……、沖矢さんじゃない……』
そう言い残して、眠るように意識を手放した。