第2章 錯綜と交錯。
安室が目を覚ますと、のベッド中だった。
そして自分の腕の中には、穏やかな寝息をたてが寝ている。
目覚めるたびに錯覚をしてしまう。
彼にとっては当たり前だったこの光景、記憶を失ったのは実は夢だったのではないかと…。
そうあって欲しいと願いながらも、以前より感情表現が豊かなに惹かれている。
共に過ごせる関係になれたのは嬉しいと同時に、喜びと落胆を日々繰り返している。
心の均衡は、とうに崩れていた。
『…ん、零っ苦しっ…』
きつく抱きしめていた腕を緩める。
は腕の中で身じろいだ。
「悪い…寝ぼけてたみたいだ」
『もう…おはよ』
「おはようございます」
違和感に、寝起きのぼやけた意識がすっと覚醒する。
お互いの距離は近いのに、見えない膜に覆われているような感覚だった。
なぜ…
彼は降谷ではなく、安室の顔で笑っていた。