第24章 【呪術廻戦】DOOR【2】
「奥さんいるのに、子供二人残して田舎に単身赴任だって」
「単身赴任?うわー、それは寂しいだろうな」
「色々大変なんだよ」
「……私の話はいいんだよ」
今まで寝ていたはずの夏油が、ガラガラに枯れた声でそう言った。
ゆっくりと上体を起こし、目をこする夏油の顔は未だに赤い。
「まだ寝ていれば」という伏黒の声に夏油は首を横に振った。
「悠仁、よく聞け。こんな事言っているけどね、恵も毎日に毎日大変なんだよ」
「え?」
「この馬鹿野郎の親父さんが馬鹿野郎でね、多額の借金を残したまま蒸発したの。その借金を返すために恵はその会社を受け継いだんだけど、この間、恵のお姉さんが交通事故に遭って意識不明の重体。借金返済と入院費を稼がなきゃいけないって時に、こいつ、取引先でヘマしてね。一人で頑張っていたのに、倒産する一歩手前まで追い込まれてね」
「なんで、あんたがそんな事知ってんすか」
「私はなんでも知っているんだよ」
ケラケラと笑う夏油の情報網に伏黒は虫を潰したような表情をした。
「だけどね、一人で頑張っていたのを知っていたから、悟がね、入院費だけは支援してやるって。会社を立て直して黒字になった時でいいからってそういう約束をしてね。だから今恵は会社を立て直して頑張ってるんだよ」
「だからなんで知ってんすか。あの人が言ったんすか」
「だから言ったろう。私はなんでも知ってるんだよ。いい話だろ、悠仁」
伏黒がそんな大変な目に遭っていたとは知らなかった。
それ以前に、伏黒に姉がいたことを今知った。
それでも虎杖は、なにもかも一人で頑張る旧友に「そうだね」としか返せなかった。
伏黒も大変だが、夏油も大変だろうと思った。
結婚して幼い子供二人と奥さんを残して田舎に単身赴任。
寂しくないわけがないのだ。