第1章 はじまり
おでんを一通り食べるととオレは日本酒を嗜む程度に飲んでいた
おちょこ一杯での頬は薄いピンク色になり、幸せそうに見えた
「…そんなこんなで、私のアカデミー時代ってなんの思い出もないんですよ〜」
お酒が入ったからかは昔の話をしてくれていた
オレもアカデミーは5歳の時に卒業していた為、なんとなくその気持ちはわかるような気がしていた
「今は?良い思い出とか作れてる?」
そういうとは少し複雑な顔をしてうーんと悩むそぶりをする
「…今は、というかここ数日ですけど……。カカシさんと過ごす時間、私にとってすごく新鮮で
既に素敵な思い出です。もちろん、今も。」
予想もしていなかった言葉に驚きつつ心が温かくなる感覚に襲われる
「カカシさんは?今、幸せですか?思い出、刻めてます?」
幸せか。自分の幸せなんて長い間考えてなかった気がする
「それ、難しいね。オレにとっての幸せって何かよく分かってなくてさ。あ、でも、思い出に関してはオレも同じ。次の任務が楽しみな自分がいる」
酒が入ってるからか、嘘偽りなく恥ずかしい言葉を並べた気がするがはふにゃりと笑いながら、そうですか、と相槌を打った
しばらくの沈黙、がお猪口に残った残りの日本酒をくいっと一飲みする
「私も、同じなんです。何が幸せなのか、わからないまま、こんな歳になっちゃいました。
幸せがわからないと生きる理由がわからなくなっちゃって。だから役に立つために暗部にいるんです。
忍になればどうしても周りに殉職していく方がでてくる。
そんな中自分で命を断つことなんてできるわけがない。見せる顔がなくなってしまいます。
…だから、何か目標を置きながら、生きるための言い訳をしながら毎日を過ごしています。」
あぁ、だから、彼女はたまにこんなに辛そうな顔をするのか…
そして、だから、オレと似ているってあの時感じたんだ…