第1章 はじまり
握りしめた紙が風が吹くと同時にパタパタと音を立てる
ーー上忍試験合格証明書
紙にそう書かれたその文字を見るたび
やっとここまで来れたと少しの達成感で嬉しくなる一方、
一つ大きな目標、自分にとっての生きる意味を失ってしまったようで複雑な気持ちになっていた。
私は
木の葉の里で平凡に暮らしているくノ一だ。
毎日ただひたすら意味もなく今を過ごしている。
私がくノ一として働く理由はただ、
誰かの役に立つという実感が欲しいからだ。
物心ついた頃から自分はあまり周りが興味を持つものにも関心が湧かず、
自分の人生を謳歌するやり方もわからないまま大人になってしまった。
上忍になれば、もっと責任の重い仕事をできるようになれば…
自分は自分が生きる意味や存在するべき理由ができるのかもしれない
そんな自己中心的な考えからただひたすら修行を重ね、今日上忍として認めてもらうことができた。
しかしいざ目指していた上忍になったとて自分がここにいる意味はわからないままだった
「…ま、また仕事が始まればそれを考えて生きればいいだけだし…。」
そんな独り言を呟きながら帰宅した