第75章 幸甚
大和警部はその一部始終を全て、
コナンくんに取り付けた盗聴器を通して
風見さんと待機している時に聞いていたらしい。
大「あんなオーバーな芝居しやがってよ…」
上「別に…オーバーじゃないもん…」
『へぇ、上原刑事のそんな姿
私もぜひ拝みたかったですね〜』
上「みっ、見なくて良いですよ!!」
ニヤニヤしながら上原刑事を見ると
彼女は顔を真っ赤にさせていて、とても可愛らしかった。
きっと上原刑事は、嘘だと分かっていても
大和警部が死んだと聞かされて、想像しただけで胸が張り裂けそうになり、無意識に泣き叫んでいたのかもしれない。
大「ただの同僚が死んだだけで、
みんなの前であんなに泣くバカがいるか。」
大和警部のその言葉に対し
上原刑事は顔をムッとさせて、大和警部に視線を向けた。
上「ただの同僚……じゃないとしたら…?」
え…っ!?
上原刑事の発した言葉にドキドキさせられた私は
チラリと大和警部の反応を見たけど…
彼は、彼女の言っている意味が
全く分かっていなさそうだった。
…ほんと、大和警部ってかなり鈍いよね、
鈍すぎ。
諸伏警部も、そんな2人の様子を見守っていたが
フッと笑みを溢すだけだった。
『あー…えっと、諸伏警部、
そろそろ病室に戻りましょう。
まだ安静にしてないといけないんですから。』
…それに、上原刑事と大和警部を
2人きりにした方が良さそうだし。
『お二人も、ちゃんと体を休めて下さいね?』
大和警部と上原刑事に挨拶をした後
車椅子を引いて病室に戻ろうと2人に背を向けて歩き出そうとした瞬間、私を引き止める大和警部の声が聞こえた。
大「あー…、あのよ、あの時は悪かった…、
キツい言い方しちまってよ。」
『…?あの時…?』
大「高明が滝壺に落ちた時だ。」
…あ、そういえばあの時
大和警部に思いっきり怒鳴られたっけ。
どうやら彼は
その時のことをずっと気にしていたようで…
気まずそうに顔を歪めていた。