第73章 隻眼
長野行きが急遽決まった私は
零くんと暮らしているマンションに戻ってきて
簡単に荷物をまとめ、またすぐ家を出た。
最近の零くんは…
…いや、いつも通り忙しい零くんは
家に帰ってくる頻度が新婚の時に比べたら減っている。
風見さんから聞いた事件のことがあるし
きっと公安の仕事で忙しいんだろう。
部下の人達にたくさん指示を出さないといけないし…
…っていうか、零くんは私が協力者として動くこと知ってるのかな?
一度連絡しようか考えたけど
もし忙しくしてたら仕事の邪魔しちゃうし…。
…悩んだ末、私は零くんに置き手紙を残し、マンションを出て東京駅に向かった。
[長野に行ってきます。]
たったこれだけの手紙だけど
零くんならきっと、私が長野に行く理由なんて
簡単に想像できるだろう。
…本当は顔を見てから行きたかったけど
今回は急いでいるから仕方ない。
何となく寂しい気持ちを抱えたまま
バスと電車を乗り継ぎ、東京駅に到着した私は
蘭ちゃんとコナンくんとの待ち合わせ場所に向かった。
コ「あっ、美緒さーん!こっちだよ〜!!」
すでに2人は到着していて
東京より寒い長野県に行くから
私と同じように厚着の防寒具を羽織っている服装に変わっていた。
『ごめんね、待たせちゃったかな?』
蘭「いえ!私達も着いたばかりですから。
電車の時間は調べておいたので、早速行きましょ?」
『ありがとー、助かるよ。』
3人で東京駅の中へ移動し
乗り場に通じる改札口へ向かった。
切符を買い、改札口の中に入ろうとしたところで
強い視線を感じ、私は切符を通す前に足を止めた。
『…??…あ。』
コ「美緒さん?どうしたの?」
『…ごめん、私ちょっとトイレに行ってくるね。』
蘭「え?電車の時間もうすぐですけど…」
『急いで行ってくるから
2人は先にホームに行ってて?』
何とか2人を先に行かせることに成功した私は
柱の影に隠れている、視線の主である人物の元へ小走りで向かった。