第17章 暗雲
首謀者を含む八名は、建物の最上部に集まっている。
夜も更けた頃、僕たちは監視していた五階建ての塔の内部に侵入した。
外では雨がしとしとと降り続いている。雨雲が空を覆っているため、日が落ちると辺りは酷く暗くなった。
闇の中、建物の内部を音もなく上り、仄かな明かりが灯る部屋へと押し入る。
「何者だ!」
一人の大柄な男が叫んだ。
その声を合図に、散らばっていた者たちが部屋の中央へと集まった。
その問いに答える間もなく、既に戦いの火蓋は切られていた。
前方を見やると、彼らの一人が印を結んでいた。瞬時に敵だと判断して、こちらに攻撃を仕掛けてきたのだ。
雨隠れの忍は、幻術に長けている。河童面が幻術を警戒し、素早く近づき術を食い止めた。
「ぐっ。術が作動しねぇ」
動揺した彼らに、丑面が術を畳みかける。
「水遁・水針雨(すいしんう)」
彼が印を結ぶと、部屋の天井全体から千本のような鋭い雨が降り注いだ。
それを見上げて、敵の一人が嘲笑(あざわら)う。
「雨隠れの俺たちに、水遁とは笑わせる」
敵の一人が水の覆いを作り、千本の雨を防ごうとした。
「と、くると思って…」
丑面は更に印を結んだ。
「雷遁・纏(まとい)」
降り注ぐ水の針の一つ一つを、雷のような電磁波が覆っていく。針は水の覆いを突き抜けて、彼ら全員に突き刺さった。雷の衝撃で身動きが取れなくなっている。
「くそっ。何だこれは!体が動かねぇ」
僕は痙攣(けいれん)する彼らに忍び寄り、すぐさま首をクナイで掻き切った。数名の人間の首から鮮血が飛び散り、絶命した。他の仲間も、首や心臓を貫き敵の息の根を止める。
集団の中央にいたのが、この計画の首謀者のようだった。
僕はその男を掴み、素早くクナイを突き付けた。
その瞬間、彼は顔を歪めて笑った。
「今更俺らを処分したところで遅いぜ」
放たれた一言に反応して、僕はクナイを彼の首元で止めた。
「何だと?」
まだ彼の体は痙攣している。
手足も満足に動かせないようだ。
相手の左肩をギリと渾身の力で掴んだまま、僕は問いかけた。
「相変わらず、木ノ葉の奴らは甘いぜ。俺らは本当の依頼主から、少し騒ぎを起こしてほしいと言われただけだ。それが片付いたら、もう安心というのは、さすがに読みが甘いというしかねぇだろう」
「…やはりそうか」