第17章 暗雲
猿面は慎重な忍だった。河童面に目配せした後、更に声を落として話し出す。
「どうも奴らは、あの建物から今しばらく出るつもりはないらしい。……と言うことはだ。既に手を打ってあるとは考えられないか?」
「まだ火の国に残党がいると?」
確かにあのとき、すべての危険分子を排除したと皆考えていた。尋問の結果判明した者も、この里の忍ばかりだと聞いている。情報部で得た通りのアジトだ。
「敵は?」
「八人」
「尋問で確認した人数と一致する」
河童面の男がこちらを振り返る。
「テンゾウ。俺が監視していたとき、奴らは何をしていたと思う?」
「どういうことだい?」
「奴ら、今の状況を想定していたかのように、悠々とこの三日過ごしていた。時に、数人で談笑したりしてな」
河童面は重々しい口調で言う。
彼の話を聞いて、猿面が緊張した様子で言った。
「同じ里の仲間が潰されて、捕虜になっているのにだぞ。まだ計画が進行中だと考えるのが妥当だろう?」
「……すると、一体何者が」
僕たちが出立するまで、そんな通達はなかった。
と言っても権力者集団の中では、地位を狙う者が近くに潜んでいても何ら不思議はない。
「火の国の、内部の人間か……」
そこまで考えて、僕は仮面の下で唇を噛んだ。
「テンゾウ…いや、隊長。まだ決まった訳じゃねぇよ。アイツらに直接吐かせてみないと分からないだろう?」
年上の丑面の男が僕の肩を叩いた。
少し前、カカシ先輩の噂話をしていた陽気な人物だ。
彼の言う通りだと思い、僕は前を向いた。
「ああ…。確かにそうだな」
一つ息を吐き、気持ちを切り替える。
そして、残りの仲間を呼び寄せて、突入の機会を謀ることにした。