第17章 暗雲
僕は、木ノ葉隠れの里を夜明け前に発った。
りんごを朝食代わりに腹に収め、他の班員と共に正門を後にする。
走り続け、夜が明けると朝焼けの空が広がった。
今日は見事な快晴だった。向かう先で遂行する任務内容とは裏腹に、清々しい程の晴天。
だが、目的地に近付くにつれ雲行きは怪しくなり、先行部隊と合流する頃には、小雨が降り出していた。
「雨隠れの里」は文字通り、雨天の多い里のようだった。
*
「奴らの動きは?」
薄暗い塔の一室に、二人の忍がいる。
先行部隊の忍たちだ。僕はその一人に近付き話しかけた。河童の顔を模した面を着けている。
彼は瞳術の遣い手で、「白眼」という特殊な瞳を持っている。
この瞳は、あらゆる物を透視して、対象を見定めることが出来る。その人物のチャクラの流れさえも。木ノ葉の持つ二大瞳術の一つだ。
「三日経つが…一向に動く気配がない」
彼は、前方を見据えたまま答えた。片膝をついた姿勢から、頭一つ上に小窓があった。そこから外の光が入っている。
もう一人が声を潜めて付け加えた。猿の面を着けた男だ。
「アイツらの仲間を拘束してから、ひと月、いやふた月は過ぎてる。流石におかしくないか?」
丑(うし)面が膝をついたまま、彼に近づいた。
彼に合わせて声の調子を落とす。
「まあ、確かにな。これまでに、救出のための交渉もないし、二度目の侵入の様子もなかったぞ」
拘束したのは二名で、他の者は戦闘の際に絶命している。尋問に手間取ったものの、その間、火の国の中で不穏な動きは見られなかった。
「後の二人は?」
僕は河童面に尋ねた。
「一人は、反対側の建物に待機してる。お前らが到着次第、踏み込む予定でな。もう一人は…三代目の元へ」
「何故?先程、動きがないと…」