第16章 連想
自宅に戻ると、台所で母が夕飯の支度をしていた。
「ただいま。お母さん、今日はいいの?」
「うん。今のところ呼び出しはないよ。こないだの子もね。もう傷もふさがって元気一杯よ。明日には退院予定」
アンタ心配してるだろうと思って、と母は先日緊急で治療に向かった下忍の子のことを教えてくれた。
「そうなんだ。良かった…」
「もう大丈夫よ。安心しなさい」
母はそう言って笑い、黄金色に揚がった豆腐をバットに取り上げた。
「夕飯食べるでしょ?」
「うん、食べる。忙しいのに悪いね。今日は何?」
「揚げ出汁豆腐よ。ナズナ、好きでしょ?」
「わぁ、楽しみ。着替えてくるね」
家に誰か居るというのは安心するものだ。
母は元気で、今も昔と変わらず任務をこなしているし、ほっとする。
自分の部屋へと向かい、ベストを脱ぎ、普段着に着替えた。
手と顔を洗い、いい匂いのする台所へと向かう。
食卓について、私は今日あったことを話した。
「さっき帰ってくるときね、アカデミーの卒業生に会ったよ。皆元気に下忍の任務を頑張ってるみたい」
「あらそう。どこの班の子?」
「カカシさんって上忍が担当の、第七班。春野サクラちゃんと、うちはサスケ君、それから、うずまきナルト君」
「あら……」
班員の名前を言うと、母は箸を置いて考え込んでいた。
「どうしたの?」
「カカシさんって、あのはたけカカシさん?」
「そうだよ。それが何かあるの?」
急に黙り込む母を見て、彼に何か秘密があるのかと疑問が湧いた。
「カカシさん、てね。木ノ葉で一、二を争うくらい優秀な忍だった、はたけサクモさんの息子さんよ。…下忍の担当上忍をしているなんて、母さん驚いたわ。本当に久しぶりに名前を聞いたから」
「そうなの…二、三回会っただけだよ。確かに、立ち居振る舞いがスマートで、余裕のある感じの人だった。うん」
私は茶碗を手に取って、ご飯を一口食べた。