第16章 連想
しばらくして、イルカ先生は執務室から戻った。
報告書の提出で職務は終わりのようで、机を簡単に片づけて、彼は「すみませんがお先に」と帰って行った。
私は明日の準備に手間取ってしまい、その一時間後にアカデミーを出た。
前に四苦八苦していた幻術の授業。
何度か経験を積み、適度なレベルの幻術が分かった。しかし、まだ非常に神経を使う授業の一つだった。それがまた明日やってくる。
*
帰り際、買い物をしようと商店街を横切ると、元気に駆けてくる姿があった。
「ナズナ先生~!」
金髪に木ノ葉の額宛てが光る。上下、橙色の服が目立つ男の子。
ナルト君だ。
その少し後ろに、うちはサスケ君と春野サクラちゃん、そしてカカシさんがいた。
「今戻ったの?」
今日任務依頼を渡した人たちの中に、ナルト君たち第七班もいた。確か任務内容は、農家の手伝いで芋掘りだったはず。
よく見ると、ナルト君は全身土まみれだった。鼻の頭についた土を手の甲で拭い、ニシシと笑っている。
「随分早く終わったんだね。かなり広い畑じゃなかった?」
「へへっ。俺の手にかかればどうってことねぇよ」
自慢げにナルト君が背を反らすと、こちらまできたカカシさんが彼の頭に手を置いた。
「ま、確かにな。お前のあのスピードには驚いたよ。ありゃ、まるで猪(いのしし)だ」
カカシさんは、こちらに視線を向けてにこりと笑う。
「どーも。ナズナさん」
「こ、こんにちは」
この間のような棘はなく、今日の彼はやけににこやかだった。本当に摑み所のない人だと、私は少し戸惑った。