第15章 くすぶる思い
どちらからともなく、職員室へと足を進める。少し間を置いて、イルカ先生は続けた。
「こう言ってはなんですが……」
「え?」
「俺はてっきり、ナズナ先生の好きな人かと思ったものですから…」
当たらずとも遠からず。
鋭い指摘にドキリとする。
「いやいや、あはは。まさか!」
もうここは、笑って誤魔化すしかないと、私は乾いた笑いを浮かべた。
「もう私なんて、色気もなくって。仕事が恋人っていうか…」
しきりに自分の髪を片手で撫でつつ、それこそ必死で言葉を繋ぐ。隣を見ると、イルカ先生がにこやかに笑っていた。
「はは、何だ。俺と同じじゃないですか。生徒の成長が楽しみで仕方ないというやつでしょう」
「……それはそうかも」
苦し紛れに言った言葉を、イルカ先生は好意的に受け止めてくれた。
賑やかな教室に思いを馳せると、確かに自然と顔は綻ぶ。イルカ先生には敵わないけど、そう言う意味で彼は同志だった。
「明日も楽しみですね」
「それはもう…。アイツらがどんな悪戯を仕掛けてくるかと思うとねぇ」
ナルト君に続く悪戯小僧は何人もいるようで、イルカ先生は大きく溜息をついた。
でも同時にまんざらでもないように見えて、私は思わず笑みを零した。