第12章 その人は
(そうか、サスケ君もか。あれだけライバル視してた子と一緒って、そりゃあ張り切るか)
私は、ナルト君の気合の入れようを見てふっと笑った。そして、カカシさんの顔を見上げた。
「あの、皆をよろしくお願いします。いい子たちばかりなんです」
「いい子たち、ですか…」
彼は少し間を置いてそう答えた。含みのある物言いで、何となく棘を感じる。
「ま、善処しますよ。俺なりにね。その先は、この子たちの努力次第だとは思いますが」
「え、ええ」
「では、イルカさん。それからナズナさん。俺はこれで」
カカシさんは暖簾(のれん)を片手で軽く払って、店を出て行った。
「そんじゃあ、イルカ先生。俺の活躍をまた聞いてくれよな!あ、ナズナ先生も。サンキューな」
「がんばれよ、ナルト」
「怪我には気を付けてね」
元気いっぱいで飛び出していくナルト君を、イルカ先生と見送る。店内は嵐が去ったように一瞬静かになった。
私はカウンター席に座り直して、まだ残っているラーメンを食べた。隣に目をやると、イルカ先生は既に食べ終わり水を飲んでいた。
(あの、カカシさんって…)
人当たりはいいものの、感情の読みにくい人だった。私はどうもそういった人が苦手で、上忍の先生方と話すときは少し緊張する。
スープを飲み終えた後、ご馳走様でした、とカウンターにお勘定を置く。テウチさんが麺の水気を切りながら、こちらに振り向いた。
「毎度あり!また来てくれよ、先生方」
愛想のいい声がまた店内に響いた。カウンター越しに、娘のアヤメちゃんの笑顔も見える。
「イルカ先生、お待たせしました。行きましょうか」
「ええ。今日はご馳走になってしまって。ナルトまで…恐縮です」
「いえ、そんな。いつもイルカ先生には業務でお世話になっているので。これくらい」
私は照れ笑いをしながら言った。イルカ先生を促して、暖簾をくぐり店内から外に出た。