第12章 その人は
私は図星なのかと苦笑いをした。椅子から降りて、彼に説明を加えた。
「あ、すみません。私がイルカ先生とナルト君を誘ったんです。任務には間に合いそうですか?」
そう口添えすると、彼がこちらを向いた。
「ん?貴女は?」
「アカデミー教師のナズナと申します。くノ一教室を担当しております。ナルト君とは共同授業などで顔見知りでして」
「なるほど、そうでしたか。イルカさんとは以前、ナルトの件でお話したことがありましたが…」
彼はこちら側に体を向けた。
少し猫背だが背はかなり高かった。首を上向きにして、彼を見上げる。
「初めまして。俺は、はたけカカシと言います。ナルトの班の担当をしてます」
丁寧な言葉遣いで彼は自己紹介をした。彼の顔半分は口布で覆われていて、晒されているのは片眼だけだった。その目をすっと細めて笑う。
「貴方が…」
何と言ったらいいのか、非常に掴みどころのない人だった。
当たりは柔らかいのに、底が見えない。一枚どころか、何枚もの心理的壁を感じた。明らかに教師仲間とは違う雰囲気がある。
「ああ。ナズナ先生は、カカシさんとは初対面でしたっけ」
「はい。私はくノ一教室の担当、と言っても担当の教科を教えるだけでしたので」
一度生徒をアカデミーから送り出したら、その先は成長に従って、中忍試験などで目にするしかなかった。活発な生徒はアカデミーを再度訪れて近況報告などもしてくれるが、それきりという生徒も多い。
目の前の生徒しか見ていない、余裕のない自分が少し恥ずかしくて髪に手をやる。
「恥ずかしながら、あまり担当の上忍の方とは面識がないんです。ナルト君の、というと春野さんも一緒ですよね」
春野さん。春野サクラ。
卒業間近には、トップの成績だった山中さんと、競うように忍術に取り組んでいたことをちらりと思い出す。
「ええ、サクラも。あとは、うちは一族のサスケです」